1951年(昭和26年)11月5日~1953年(昭和28年)11月7日【二島返還論】

 

第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第10号 昭和26年11月5日

そこで一体政府としては、千島の範囲をどういうふうに見ておられるのか、即ち国後、擇捉は千島に属すると見ておられるのか、見ておられないのか、この点を伺いたいと思います。

例えば最近のこれはまあ文部大臣にも機会を見て伺いたいと思つておるのでありますが、外務省のほうから御連絡をして頂きたいと思いますが、例えば最近の中等学校の社会科あたりの、まあ昔で言えば地理でありますが、地図を見ますと、澤捉島、国後は日本の領土外のようにしるしを区切つてやつておるようであります。

古い歴史、或いは同じく社会科の地図の中には、例えば伊能忠敬が調べた地図を見ますと、国後は日本の北海道に属しております。

こういうふうに一体現在千島をどの範囲に政府は見、又教育の面でもどういうふうにしておられるのか、この点を明らかにしたいのですが、先ず以て外務当局として千島の範囲をどういうふうに見ておられるのかこれを伺いたい。

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○政府委員(草葉隆圓君)

日本政府といたしましては歯舞、丹色は千島とは考えておりません。北海道の一部と考えております。

從つて千島の範囲についての問題になつて参りまするが、実はお話のように国後、擇捉は、いわゆる宮部ライン以西と申しますか、一八五五年の安政條約、その前後におきましても、何ら問題になつた所ではないのでございます。

いわゆる擇捉、国後は從來から曾つて歴史始まつて以來と申上げていいほど、日本領土であるということにおいての疑念は、国際間に曾つて起つたことがないのであります。

従つて一八五五年の時には、はつきり擇捉、国後、むしろその上の得撫島が問題になつたほどであります。

從つてここまでは全然從來から問題が生じたことは曾つてない。

で、安政條約におきましてもこれははつきりと而も素直に日本領土として認められ、その後明治八年の樺太千島交換條約によりまして、いわゆる現在言われております全部の島が日本領になつて來た。

こういうまあ歴史的な関係があるのでありまするが、いわゆる千島、いわゆる得撫島という点から申しますると、そういう歴史を持つておりまするけれども、やはり国後、擇捉というのは、全体的に千島と解釈するのが、最もこれは実は妥当じやないかと、こういう解釈をとらざるを得ないのじやないかと考えております。

 

○楠見義男君

どうも今の政務次官の御説明ではわからないのでありますが、国後、擇捉は從來も日本の領土であるが、得撫島が実は問題になつておつたと、こういうような御説明でありましたが、最後になりますと、国後、擇捉が千島に含まれると、こういうことでどちらを信じていいのかわからないのでありますが、もう一度はつきり国後、擇捉は千島に含まれるのか含まれないのか、この條約の二條に言つておる千島列島というこの千島列島に、これらの島々が入れるのか入らないのか、この点をもう一度明らかにして頂きたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

この千島列島の中には、歯舞、色丹はこれは全然含まれない。

併し国後、擇捉という一連のそれから以北の島は、得撫アイランド、クリル・アイランドとして全体を見て行くべきものではないか、かように考えております。

 

○楠見義男君

この、すべきものではないかという解釈はどういう根拠で出ておるか、その点を伺いたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

それは今申上げましたように、実は領土的な区画におきましては得撫が問題になつて、国後、擇捉というのは全然問題はなかつたのであります。

そういう意味から申しますと、いわゆる関係国はこれに対して、全然從來から日本領土としての疑義を挾んだことはない。

併し千島というこの一つのクリル・アイランヅという立場から申上げますと、これだけを切離すことは却つて無理なこじつけになつて來るのではないか。千島全体の問題がむしろ中心の問題であると思います。

 

○楠見義男君

この條約で、特に領域ということをきめる場合には、單なる地域的な名称ではなくて、從來例えば日本の領域に属しておつたところ、或いは属しないところのことが問題になると思うのでありますが、例えば千島列島について今のお話のように從來はつきりと日本の領域としてきまつておつた、そこで、こういうふうに領域問題として、條約上の用語として取扱われる場合に、ときには領域的な言葉として用いられ、或いはときには地理的用語として用いられるというようなことで混同を來たすわけでありますが、ここに言つておる千島列島というのは、もう一度伺いますが、地理的名称としての千島列島と、こういうふうに解釈していいかどうか、その点を伺います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

もう一つ、実は歯舞……色丹は余り含まれておりませんが、歯舞、色丹、或いは色丹を含めた歯舞、先にお話のあつたこの点につきましては、はつきりとダレス氏も日本領であるということを表明しながらこの條約の説明をいたしたわけであります。

それで千島という言葉の中で指しております條約のクリル・アイランヅという中には、このクリル・アイランヅというのは千島全体についての表示だと、こう考えざるを得ないのであります。

ただ日本領土が国後、擇捉まで及ぶかどうかという問題については今申上げたようにこれからずつと北の得撫島までは一応全体の千島として考えておる、そうして進んで行くべきことが、これは一つの地理的な関係におきましても、すべての点から考えても当然な解釈じやないかという解釈をとつておるわけでございます。まあとらざるを得ぬと申しまするか、とることが妥当であると、こう考えております。

 

○岡本愛祐君

じや、あまあそのくらいにしておきます。一応そうお聞きしておきます。それからこれは念のためにお尋ねするのですが、すべての権利、権原及び請求権とこういうふうに書いてあります。

ライト、タイトルと分けてありますが、それはどういうことでありますか、説明して頂きたい。区別、それから主権との関係……。

 

○政府委員(西村熊雄君)

この表現は講和條約におきまして一国が領土、主権を放棄する場合に使われる慣用的な表現であります。

権利、権原、請求権、殊に請求権という句が入りましたのは、二條で取扱つておるのは純粋の領土権の放棄ではなくて、信託統治制度に基く一種の権利と申しましようか、又西沙群島に対します種の日本の立場、それから南極地域に対する先占的主張、こういうものを含めまして放棄させることになつたわけでございますので、(a)から(f)まで通じまして、同じ表現を用いるために、権利、権原、それに請求権という文字が入つたわけでであります。

この最後の請求権は、財産的請求権という意味ではなく、領有関係の主張と申しましようか、そういうものを放葉させる趣旨でございます。

 

○岡田宗司君

私は先ほどの千島の問題に関連してお伺いしたいのですが、いずれ委員から出る問題でありますが、千島問題について一つお伺いしたい。

千島はソ連軍によつて占領されましたのは、ヤルタ協定に基く結果であると思う。

このヤルタ協定において千島というのがどういうふうに解釈されておるか。

先ほどから千島の地理的概念につきまして或いは行政的概念につきましていろいろ御論議があつた。結局草葉次官のお話だと、過去において国後島等は問題にはならなかつたけれども、併し地理的概念としてはこれは千島の一部と見て行くより仕方がない

そこで国後島までを含めて占領されたことは、これは止むを得ない。

又今後日本が領土権を放棄することは止むを得ない。

併し色丹、歯舞は違う。で、色丹、歯舞が問題になるわけでありますが、このヤルタ協定における千島列島の解釈について條約局長は本條が日本とアメリカにいろいろ交渉される場合におきまして、ヤルタ協定に示された千島の概念についてはつきりお確かめになつたことであるか。

その際に色丹、歯舞島はヤルタ協定における千島の概念から除外されておつたものであるか。

或いはそのときには色丹、歯舞は千島の概念に含まれておつたものであるかどうか。この点についてお伺いしたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

これは恐らくヤルタ協定じやなしに、先に條約局長からも触れられましたようにモスコー協定のちよつと前に、恐らく九月二日の前に三十八度線をきめましたり、或いは南のほう、それぞれの占領軍の占領地区をきめましたときに起つて來た、そうして相談になつた地区だとこう考えております。

ただ実際の状態を、当時の状態を見ますると、丁度歯舞、色丹というようなところは從來から北海道の一部として取扱つておりましたが、日本軍が配置されておりました形態が千島と一緒になつておりましたために、ソ連軍が侵入して参つて占領に参りましたときにずつとこれらの島まで來たというような現実的な問題が起つて來ておると存じます。

 

○岡田宗司君

ソ連とアメリカとの間におきまして、その占領いたす場合に、そういう三十八度線と同じように地域をきめる、この際には今言つたような早々の際であるから、從つて将來に問題が残るというようなことを考えないで、両国の間に早々に取極められた、こういうふうに解釈してよろしいのでありますか。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

今から考えますると、当時はつきりしたこの線が、三十八度線みたように引かれておりますると、このような問題も或いは起らずに済んだかとも思います。

 

○岡田宗司君

ダレス氏が講和会議におきまして歯舞等の問題について言及しておりまして、これは日本領だ、こう言つておるのは両島が、色丹、歯舞島が地理的概念として千島というカテゴリーに入らない、そういう解釈からそうされておるのか。

それとも又この両島が北海道に固有する島である、行政的な立場からしてそういうふうに考えられたのであるか。

そして若し今日のソ連側が両島を占有しておることがこれがいけない、これはまあ何と言いますが、誤りであるというふうに解釈されておるようでありますが、そうだとすれば何故もつと前からそれが問題にならなかつたかというようなことの事情について日本政府はどういうふうにそれを確かめられたか、その点をお伺いしたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

これは実は日本政府といたしましては千島全体、或いは歯舞、色丹、国後、擇捉、そういうすべての歴史的、地理的、或いは地質学的、経済的、文化史的と言いますか、あらゆる点から、住民のいろいろな模様から資料を提供いたして参つたのであります。

從つて歯舞、色丹の問題につきましてはお話のように行政区画も從來から違つておりますし、或いは地質学的にも違つております、又從來からそれらの住民の北海道本道との状態も違つておりますし、いろいろなそういう状態を現実に知られた上においての判定で、あのような意思をはつきりと表明せられたことと思います。

 

○岡田宗司君

只今そういう理由で歯舞、色丹は千島と違うのだということをアメリカ側において認識せられておるといたしました場合、すでにアメリカとソ連との話合いでソ連が両島まで占領しておるわけでございます。

で、いわばアメリカか默認をした形、若しくは積極的に承認をした形で両島まで占領されたと解釈せざるを得ない。

併しそれは明らかに千島でなかつた。

そういたしますればこれは当然アメリカ側からソ連に対しましてその両島は占領を解いて日本に返還すべきであるという交渉をしなければならんと思います。

アメリカ側はソ連に対しまして両島が千島ではないと言うて、そうしてそれを占領すべきではない、撤退すべきであるというような交渉をしたことがあつたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

その点は今私といたしましては、アメリカの從來これにとりました態度についてお答え申上げる資料を持たない次第でございます。

 

○岡田宗司君

そういたしますとアメリカ側は歯舞、色丹両島が千島列島でないとされておりながらソ連軍の進駐を許して、そうしてそれが今日アメリカ側によつても問題にされておりながらアメリカ側がこれが解決について何らの措置をとらなかつた、こういうことになつて参りますと随分どうも無責任な話のように思われるのであります。

それをその後のソ連に対する交渉について草葉さんが御承知になつておらなければそれは仕方がないのでありますが、ダレス氏が平和会議の際の演説の中において両島の将來の問題につきまして国際司法裁判所に訴えたらどうかというようなことを言つておられるのであります。

ところがこれは西村條約局長が衆議院で御答弁になつたところを見ますと、どうも提訴するわけにはいかんようであります。

そういたしますと又甚だ無責任なことを言われて、まあこの問題については突つ放された、こういうふうにしか考えられないのでありますが、この問題につきましての解決について政府はどういうふうにお考えになつておるか。又それについての具体的措置として今の政府がお考えになつているところは何であるか。これをお伺いしたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

お話のようにダレスさんがサンフランシスコ会議で申されましたときには、まだ実はソ連が調印しない前でございます。

從いまして恐らく当時はソ連が調印することも予想されるわけでございますから、するかしないかの前であつたと記憶いたします。

從つてソ連が調印をいたしまして、いわゆる條約における当該連合国となりました場合におきましての方法としてあのような方法を言われたことだと考えております。

現在におきましてはその状態が実は変つて参つた次第でございます。

今後におきまする政府の態度といたしましてはこれはいろいろ関係がありまするので、十分日本国民の意思を或いは今後の国際外交の回復に伴いましてそういう外交機関を通じたり、或いは又ソ連といろいろな場合における協議等の機会も必ずしもないとは申されないのでありまするから、十分平和的な手段によりまして国民の熱望を伝えながら目的を達成するために努力をして参りたいと存じております。

 

○岡田宗司君

御希望はよくわかるのですが、現在のところは何にも方法がないと、こういうふうに言われたものと解してよろしうございますか。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

現在は先ずこの條約を各国が批准してくれまして先ず独立をいたしてから、国交回復してあらゆる努力を進めて参りたいと存じております。

 

第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第11号 昭和26年11月6日

○楠見義男君

第二條乃至第四條について若干お伺いいたしたいと思いますが、先ず第二條の関係で草葉政務次官にお伺いいたします。

それは、昨日もちよつとお尋ねいたしました千島の問題なのでありますが、結論は昨日の御答弁によると、千島列島なるのは地理的名称によつたというような意味の御答弁がありましたが、実は色丹島を含む歯舞諸島は地理的に見ますと、大体千島列島に含まれるようなふうに思われるのでありますが、それを特に色丹を含む歯舞諸島は千島列島から除外されておるのは、いろいろの機会に言われておりますように、従来北海道の一部として行政をしておつた、即ち日本の領土主権の沿革的な観点からそういうふうに言われておるのじやないかと、まあ思うのであります。

そこで領土主権の沿革的な観点から言えば、昨日も申上げたように、又この委員会で参考人から意見を聽取いたしましたように、国後、或いは択捉というものは日本の領土主権の沿革的な意味から見れば、これは千島諸島には包含されない、こういうふうに解釈をせられるのでありますが、而もなお地理的名称による千島列島になつたと、こういう場合に、その地理的名称における千島列島の範囲というものは一体どこがきめるのか。

従来公権的に、千島列島というのはどの島どの島というふうに、公権的に明らかになつておつたものがあるのかどうか、この点を先ずお伺いしたいと思います。

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○政府委員(草葉隆圓君)

これはいろいろな従来の外交的な書類を調べて見ますると、実は千島列島というものについて、詳しく一々島なり島嶼なりを列挙してやるということがなかなか少いようでございます。

従つてお話のように一つの行政的と申しますか、或いは従来の條約の関係というような点からするといろいろな問題が含まれておる。

で、むしろ歯舞、色丹というものは、これは国後群島の一つの延長である、地質学的にも違うというようなことは従来から言われておる通りであります。

そういう点から言えば極く通念的と申上げるほうが、却つて常識的と申上げるほうがいいくらいの立場からの島ということを定義することが本筋じやないかと思います。

従つて行政的な場合から申しますると、南千島と或いはそれ以北の島とお話の通りすつきり違つておりますから單に行政的だけではいかんと思います。

 

○楠見義男君

実は問題は、二條で、千島列島に対しては日本があらゆる権利、権原及び請求権を放棄すると、こういうふうに規定されておりますので、従つて問題を将来に残すのではないかという意味でお伺いするのでありますが、今御答弁をお伺いいたしましても、公権的に千島列島の範囲というものが明らかになつておらない。

この場合に然らば問題として、例えば歯舞諸島に対して現在ソ連が軍事占領をやつておる、この場合に地理的名称としての点が明らかになりませんというと、例えば日本が権利、権原、請求権を放棄しておる島にソ連が占領しておる場合と、平和條約によつて日本に残された領土に対して占領しておる場合とは、これからの問題としてはいろいろ国際的にも問題を残す余地があると思うのでありますが、そこで最終的に、恐らくこれは国際司法裁判所というような所で明らかになるのか、そのほかどういう所で最終的には公権的に明らかになるのか、その点を先ず伺いたいと思います。

 

○政府委員(草葉隆圓君)

で、もうちよつとその前に今質問のおありになつた所は、私の答弁が不十分であつたかと存じますが、歯舞、色丹は千島列島にあらずという解釈を日本政府はとつている。これははつきりその態度で従来来ております。

従つて千島列島という場合において国後、択捉が入るか入らんかという問題が御質問の中心だと思います

千島列島の中には歯舞、色丹は加えていない。

そんならばほかのずつと二十五島でございますが、その他の島の中で、南千島は従来から安政條約以降において問題とならなかつたところである。

即ち国後及び択捉の問題は国民的感情から申しますと、千島と違うという考え方を持つて行くことがむしろ国民的感情かも知れません。

併し全体的な立場からすると、これはやつぱり千島としての解釈の下にこの解釈を下すのが妥当であります。

その場合に将来今後どういう問題が起つて来るか。

殊に千島にあらずとしている歯舞、色丹について現在軍事占領を行われておる。

恐らくこれは引続いた情勢において考えられて来る問題であろうかと思う。

この場合には、九月五日の午後サンフランシスコにおきまするダレスさんの演説では、国際司法裁判という方法もあるのじやないか、二十二條による方法もあると言われてゐる。

併しそれはソ連がまだ調印をするかしないかわからない時で、会議に出ておりまするから、調印をすることを予想しながらの発言であつたと考えられます。

九月八日にはソ連は調印しませんでした。つまりこの條約にソ連は責任を持たない。

そうすると、今後はそういう状態において、日本が若しやこの歯舞、色丹の問題を国際司法裁判所に提訴いたしましても、ソ連が応訴をすることをしない場合には取上げられないということになつて参りましようし、従つてこれは総理からもたびたび御説明、御答弁申上げましたように、今後は国際関係において努めて最大の努力をしながら、日本が、これは千島と違い日本の純然たる領土であるということを了解してもらつて、そうしてその了解が円満に解決する方法をとる以外には方法はない。又そういう情勢は、独立後においては幾らでも出て来得る情勢は現在以上にある。こういうふうに考えます。

 

第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第13号 昭和26年11月8日

○政府委員(草葉隆圓君)

御質問の御要点は、結局第二條の(c)項、第三條の問題だろうと思います。

第二條の(c)項、千島、樺太に関する問題でありますが、これは実はダレスさんもサンフランシスコ会議で申しておりますように、連合国間には若干の私的了解がありましたがという言葉を使つておるのであります。

これは実際に私的了解があつたようでありまするが、併し千島、樺太に関する限りにおきましては、日本は全然侵略というような言葉を以て表現することは決して適当ではない。

正当な方法によつて主権、領有権を従来から持つておつたのであります。

殊にお話の一八五五年の下田條約におきまして択捉と得撫の境が境になつて、国後、択捉というものは従来から全然日本の領土ということに対する疑義を国際間にさしはさんだことはないのであります。

ただそれ以北においてロシア人と日本人が一緒におりました状態で、ここではつきり境目をいたしたのでありますが、一八七五年のいわゆる千島、樺太交換條約によりまして全千島は日本の領土になり、樺太をロシアに讓つたのであります。併しここにおきましても当時日本人がすでに樺太に相当住民として仕事をしておりました関係から、或いは税金なり、或いはその他あらゆる点においてロシアは十分に日本の従来の立場を了解しておるのであります。

かような関係でございまするから、この千島、樺太に関する限りにおきましては、日本は全然いわゆる不正当なる方法によつて領有したということは妥当でない、該当しないのでありますから、吉田総理もサンフランシスコ会議におきましてその点は日本人の心持をはつきり申述べておるのでございます。

殊に只今御引例の歯舞、色丹の両島は、これは領有権とか、主権とかいう問題ではなくて、日本の従来から、ずつと以前から、最初からと申上げるほうがいいでしようが、いわゆる北海道の一部で、何らこれに対する疑いは従来からなかつたのであります。

勿論それは国際的に疑いがなかつたのでありますから、我々は北海道の一部であり、日本の領土である、かように主張いたして参つておるのであります。

https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215185X01319511108/25

 

第12回国会 参議院 本会議 第20号 昭和26年11月18日

○大隈信幸君

領域に関しましては、連合国が大西洋憲章を無視して領土慾を現わしたきらいはないか。

色丹、歯舞諸島は千島に含まないとは公式解釈か。

南西諸島は国連憲章第七十七條の1の(ろ)によつて分離して信託統治となる以上、日本に主権は残らぬ理窟となるではないか。

南西諸島等の住民は日本人として残るか等の質問に対し、政府側から、ポツダム宣言で日本の領域が四大島及び連合国の定める諸小島に限るとある以上、いたし方がない。

色丹、歯舞群島は、ダレス氏の声明もあり、これらが北海道の一部であることは連合国の絶対多数の承認するところである

国連憲章第七十七條1の(ろ)による分離にはいろいろの態樣があるわけであつて、サンフランシスコ会議の米英全権の発言にある通り、信託統治に置かれても、南西諸島等の主権は日本に残り、住民は日本人として残るといつた答弁がございました。

主権が残ることになつたのは政府苦心の結果で、多とするとの一委員の発言もありました。

千島に関してはその範囲が問題となりましたが、歯舞、色丹は、北海道の一部であつて、千島ではないとの主張を持する旨、政府の見解が披瀝せられました。

国後、エトロフ両島も一八五五年の日露條約で明らかに日本領と認められ、又宮部ラインによつてウルツプ以北とは学術上あらゆる点において異なり、国民感情的にも千島にあらずと思われるが、常識的には千島の中に入るのではないかとの趣旨の応答もございました

由来、千島諸島は全体を通じて毫も我が国が侵略又は貧欲によつて得たものではないので、これらについてはできるだけ我がほうの見解が了解せらるることが期待されるのであります。

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第13回国会 参議院 外務委員会 第10号 昭和27年3月7日

○政府委員(石原幹市郎君)

それから先ほど申上げましたこの資料以外にも千島の一部、歯舞等につきましてこちらからいえば不法占拠のような事情もある

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第13回国会 衆議院 外務委員会 第23号 昭和27年5月7日

○岡崎国務大臣

御承知のように、歯舞、色丹等の島が根室に属しておつて千島に属していないということは、これはもう明らかな事実であります。

ただ終戦当時千島を防衛しておつた軍隊が、歯舞、色丹がちようど島であつたものですから、あわせて防衛の指揮下に入れておつた。

従つてその司令官がソ連側に降伏したときに、歯舞、色丹もあわせて降伏したように考えて、占拠して来たというのが始まりでありまして、今に及んでいるわけであります。

これは平和条約の中にも定義はいろいろありましようが、千島は日本が権利、権原を放棄することになつておりますが、しかしそれにしてもまだソ連が調印しておりませんから、ソ連に対しては千島に対する領土権等は発生しておらないわけであります。

しかしそれは別として、歯舞、色丹等は当然日本の領土であることはあたりまえな話であります。

これはどこから見ても御説の通りであります。

これをどういうふうにやるかということにつきましては、まず事態をできるだけ明らかにして、各国の了承を求めなければならない。そして国際的の輿論をこれまた動かさなければならぬ。

またかりに将来世界の諸国が日本と国交を回復して、ごく少数の国だけが取残されたというような事態になれば、ソ連側もあるいはいろいろ考えて来るかもしれません。そういう場合には、この問題は一つの懸案事項としてまず解決を試みるべきものであると思つております。

方法はいろいろありますが、今ただちに力をもつてどうということは、とうていわれわれは考えておらないことでありまして、それ以外のあらゆる方法でわれわれの考えを実現したいと思つておるような次第であります。

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第13回国会 衆議院 外務委員会 第24号 昭和27年5月14日

○小川原委員

この際ごく簡明に四、五お尋ねしたいと思うのであります。

問題は千島、樺太、歯舞に関する問題であります。

今回の講和條約は信頼と和解、その上に領土不占有という主義のもとに講和が成り立つたのでありまして、吉田首相はサンフランシスコにおいて、このような穏やかな主義のもとに講和を進めて行く上においてもまことに遺憾であるという、遺憾の意を表して、この千島、南樺太というものを放棄いたしました。

われわれ国民といたしましては、何のためにこういうりつぱな標傍のもとに世界の平和を維持しようというのに、どうして無理やりに放棄せねばならないという理由が起つたのでありましようか。八千万国民はこの点を非常に不可解に思うている。

この点あまり長い時間もかかるまいが、概要でよろしゆうございます。から、事情があるならば御説明を願いたいと思う。もしおさしつかえの点があるならばしいてとは申しません。

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○岡崎国務大臣

これは日本としてはポツダム宣言を受諾いたしまして、あのポツダム宣言の中に、日本は本州、四国、九州、北海道の四大島とその他連合国の定める諸小島が日本の領域になる、こういうように言つておりまして、これを無條件で受諾したわけであります。

従つて連合国がどう決定をしましようとも、これを受諾するという約束でありますから、約束は約束でその通り受諾いたしますけれども、日本の希望として日本の実情、また領土の狭降なことやら、過去の歴史的な深いつながりがある等のことから考えまして、千島、樺太等は少くともその一部でも日本の領域にされるべきことを政府も期待し、国民も期待しておつたと思うのであります。

しかしながら連合国としてはいろいろな事情がありまして、こういうような平和條約の決定になつた。

そこで決定された以上は、ポツダム宣言を受諾した日本としては、いさぎよくこれを受諾するというのが——これはつまり終戰当時にポツダム宣言をあのまま受諾しなければ、さらに非常な災禍が起つたでありましようものを、受諾したがために終戰になつて今日に至つたのであります。

そこでその当時男らしく約束したことであるから、不満ではあるけれども、これはあつさりのむ以外に方法がない、こういう意味で総理も不満の意は表しながら、この平和條約は連合国の決定したものであるから受諾する、こういうことになつているのであります。

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○小川原委員

ただいまの御説明によつて、私どももそうであると了承はいたしておるのであります。

世界全体からながめまして、日本の領域が狭いのに、人口八千万人を有して、またその人口の増殖率というものは世界に比を見ないところの増殖率を持つているのに、三千方里もあるこの領域を無理に投げた。

平和を求めるという上において、やむを得なかつたのでありましようが、かような措置は、われわれははなはだ不可解にたえない。

この不可解なことを是正しなければ、あるいは将来において第三次戰争が起るか、第四次戰争が起るかそれはわからぬと思う。

こういうむちやなことはないと、私どもは理論的に考えると考えられる。

しかし今の通りだ。

しかしわれわれはまつたく平和を愛好したために、しかたがありませんから、涙をのんでこれを放棄いたしまして、そうして平和を持続して行く、そこで問題の起ることは、われわれはさように考えて、まことに純真な、よい国民であるが、放棄したところの領土は、これはどこお領土になつておるのでございますか。私の考えるところによれば、ソ連の領有ではないかと信ずるのでありますが、それは間違つておりますか、どうでありますか。

 

○岡崎国務大臣

この平和條約によりますと、平和條約に参加した国がこの平和條約の利益を得るのでありまして、ソ連はまだこの平和條約に参加しておりません。

従いまして平和條約によつて日本はこの領土を放棄したのは今おつしやつた通りでありますが、これがどこの領域になるかということは、まだ決定しておらないのであります。
〔「ヤルタ協定があつて決定しているじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕

 

中略

 

○岡崎国務大臣

これは先ほど申しましたように、われわれもむろん満足はしておりませんが、ポツダム宣言を受諾する約束をいたしまして、そのポツダム宣言の條項に従つて連合国がきめましたものを不満であつても、いまさら先の約束を翻して、これは困ると言うわけに行かないとわれわれは考えておりますから、平和條約によりまして千島、樺太の放棄をいたしたのであります。

従つて放棄をいたしたのでありますから、これを回復しようという考えは持つておらないのであります。

ただ連合国がまた考えをかえてこの條項を直してくれれば、これに越したことはない。

また千島列島の南にありますいわゆる歯舞、色丹というような島々は千島に入らないことはあたりまえな話でありますから、これについては、権利の放棄は第二條にありましても、当然日本の領域であるという主張は最後まで持続するつもりでおります。

また千島列島と申しますものも何をもつて千島列島とするか、その定義はいろいろあるようであります。

たとえば明治の初めの千島樺太交換條約というのを見ますと、千島列島——クリルズと書いてありますが、実際の対象は北千島に限られておつたようであります。千島の定義もいろいろ人によつて意見が違うと思う。

これらの点も将来できるだけ早くはつきりした解決をいたしたい、こうわれわれ考えておるのであります。

 

○小川原委員

ただいまお話がありました通り、国後島、択捉島等千島列島の中の——放棄はいたしたが、これは私は誤つた放棄の仕方だと思いますので、これは定義がきまつておらなんだから、外交上そういうことにいたして平和を求めたのだということならばその通りでありますけれども、これはまつたく歴史の上からながめて千島列島の中に入らないのであります。

これはわれわれから見ますと、どうしても日本の領有であります。

それからもう一つは、今千島列島の放棄のことと、それから南樺太のことを申し上げたのでありますが、ただいま御説明のありました中に、色丹と歯舞、これは日本の領有であります

日本の領有であるのに、なぜソ連だけが兵隊を駐屯しておるのであるか、何も今ソ連のごやつかいにならなくても日本国民はさしつかえないのであります。

何のために不法にも人の領域へ進駐しておるか。

私どもはソ連に対してひとつ講和を取持つてくれないかといつて頼んだのであつて、一発の鉄砲を撃つたのでもない。

日本人はそんなむちやな国民ではないのです。それをどんどん入り込んで来て、われわれが生業を営むところを五箇年、七箇年になる間無断で占領しておつて、われわれの同胞が苦しめられておる、こういう不法なことを一体国際公法というもので許すのかどうか。

これは共産党にだけ許しているのかどうか、私はそういう疑いを持つのです。こういうところは一刻も早く取返さなければならぬし、ソ連兵に帰つてもらわなければならぬわけであります。

(林(百)委員「沖縄のことを言いなさい」と呼ぶ)あとから話すから黙つていなさい。自分の痛いことばかり言われるから……。そういうわけでありますから、ここからソ連の兵隊にさつそく帰つていただかないと困るのであります。政府としてはどういう手を打つて帰つてもらうようにされるのでありますか、お話をお聞きしたい。

 

○岡崎国務大臣

連合国側でも歯舞、色丹等は日本の領土であつて、放棄すべき千島の中には入つておらないということは認めておりました。従つて平和條約ができました今日としては、少くともこの歯舞、色丹等からはソ連が引くべきものであるということはみな一様に考えておるようであります。

しかしながら力をもつて占拠しておる場合にこれを追い立てるということになりますと、また力を用いなければできない場合もありますので、こういうものはできるだけ世界の輿論にも訴えまして、人道あるいは正義の上から申して、早く日本に返るような措置をいろいろな面で打たなければならぬと考えております。連合国もそう思つておるようであります。われわれもできるだけその方面に努力を注ぐつもりでおります

 

中略

 

○林(百)委員

歯舞、色丹の問題がさつきから出ておりますが、これはヤルタ協定の際アメリカとソ連との了解では、あれが真珠湾攻撃の重大な基地にも用いられた、従つて将来日本軍国主義が復活する場合に備えて、あそこをソ連が領有するということについてはバーンズもあらかじめ了解している。そしてソ連の領土とすることに、はアメリカは何ら異議を言わなかつたのであります。

それを今になつて歯舞、色丹の問題を反ソ反共の材料にして——連合国で決定する問題をここで日本が反ソ反共の材料として特ち出して、しかも不法に占有しているとか、力をもつて不法に占有しているとか、それに対抗するにはあたかも力をもつてしなければならないような質問も許され、またそれを是認するような政府の答弁は私は納得できないのであります。

あそこがかつて真珠湾攻撃の重大な軍事基地として用いられたことをあなたは認められますか。

そういう経過があつたために、将来日本の軍国主義の復活を阻止するためにあそこをソ連の領有にするという了解が、ルーズヴエルトとスターリンの間にヤルタ協定で行われて、その後ソ連の憲法を改正して領土とすることに対して、その当時アメリカ側は何ら異議を言わなかつた。

その後朝鮮事変その他の国際情勢の変化から、急にそういう問題が持ち上つて来ている、こういう経過をあなたはお認めになりますかどうですか。

あの問題は明らかに国連側あるいは連合国側が決定すべき問題であつて、ヤルタの了解事項その他の了解事項を無視して、日本の立場だけを主張するわけに行かないと思いますが、その点はとうですか。

 

○岡崎国務大臣

ヤルタ協定等は秘密協定でありまして、協定自体はあとから発表されましたが、その発表されたものには歯舞、色丹なんという文句は一つもないと思つております。

またそんな、歯舞、色丹のような小さな問題かヤルタで話されたとは私は全然考えておりませんし、バーンズの記録と言われますが、そういうものにも私の見た限りでは、林君の言われるようなことは書いてあるとは思つておりません。全然ないと思います。

事実は、千島も歯舞、色丹も畠でありますので、あの辺の島一帯を一つの司令官が守つておつた。その司令官が連合国の指示によつてソ連軍に降伏した。そこでソ連軍がその司令官の管轄しておつた地域へ入つて来た、そこで歯舞、色丹にも入つて来た、こういうだけの事実と私は了解しております。

そしてまたわれわれの方からいえば、ヤルタ協定等は日本には全然関係のないことでありますから、別にこれをどういうことはありませんけれども、かりに関係がありとしても、林君の言うような事実はないと信じております。

 

○林(百)委員

バーンズの「想い出」について、あなたが読んだ部分にはそういう、パールハーバーの基地となつた歯舞、色丹をソ連側が領有することについては了承があつたということについて、あなたは知らないと言うが、私ははつきりと記憶しておりますから、次会に私の資料を提供いたします。

そういうことが一つと、もう一つはヤルタ協定は明らかに、日本と戰争しておる際に連合国の間でとりきめたのでありますから、もちろん交戰国の相手方に、将来お前の方が負けた場合は、ここの領土はおれの方がもらうというようなことは、常識にいつてあり得るはずがない。

あれは秘密とりきめだから守らないということは、ポツダム宣言あるいは降伏條項に反するのじやないか、今になつてヤルタ協定は秘密協定であるから関係しないということは、当論だと思います。

かりに百歩讓つて歯舞、色丹の問題について——国際的に正しい立場から私は言つてる。そんな乱暴なことを言えるはずはないです。一応私たちはそれを認めなければならぬ。

かりに小川原委員の言うように歯舞、色丹が日本にとつて重要だというならば、将来ソ同盟との間に外交関係を開き、親善関係を結んで、外交交渉にまかせるべきだ。

ところがあなたは向うの呼びかけに対して、旅券も出さない、向うの呼びかけは一切はねのけて、犬の遠ぼえみたいなことを言つておつたのでは、いつまでたつても解決しない。

ここですみやかに外交関係の糸口を開くことに努力すべきである。その点についてはどうですか。ただ不当だ不当だと犬の遠ぼえのようなことを言つたつて、問題はちつとも解決しないじやないか。そうしてただ反ソ反共の材料をつくつて、日本をますます孤立化の方向へ持つて行く。あなたはシーボルドのお気に入るかもしれませんが、しかし日本の国の国際的な寄與にはならない。外務大臣としてどう思いますか。

 

○岡崎国務大臣

先ほど林君は、カイロ宣言その他の條項と言われましたが、ポツダム宣言には「カイロ宣言の條項は、履行せらるべく、」とあつて、その他の問題は一つも入つておりません。

そうして私どもはかりにヤルタ協定がそのときにあつても、秘密協定であつて、ポツダム宣言にかりにその他の條項ということがあつたとしても、知らないものを守るわけには行かない。

ヤルタ協定は隠されておるから知らなかつた。そのポツダム宣言受諾の当時には、わかつておればともかく、わからないものをあとから守れと言つたつて、そんなことはできないのがあたりまえの話であります。

またそれは全然領土の帰属の問題であつて、われわれの方は領土の主権を放棄するかしないかという問題でありますから、ヤルタ協定とは何ら関係がないということになることは当然であります。

またソ連との間に解決のために国交をどうとかいうお話がございますが、われわれの方では正しいことをいたしておるのであつて、これに対して何も頭をたれ、尾を振つて、ソ連のきげんを取結ばなければならぬとは考えておりません。むしろ反省すべきはソ連であろうと思つております。

 

○林(百)委員

「カイロ宣言の條項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし。」要するに、「吾等の決定する諸小島」というのだから、日本の主権の範囲は、連合国の決定が含まれておるということなんです。

だからヤルタ協定その他によつてすでに決定されたものは、当然であつて、その他日本の主権をどこまで及ぼすかということは、連合国の決定によるということなんです。

当然ヤルタ協定が守らるべきだということは、ポツダム宣言あるいは降伏文書によつて明白だと思う。あなたの言うことはこまかしだ。

ヤルタ協定は守らぬでもいいということは、ポツダム宣言の精神に違反しておると思う。

樺太、千島には当然日本の主権は及ばない。だから日本は講和條約で放棄したでしよう。そんなことはいまさら私が言うまでもない。それなら、なぜ講和條約で樺太、千島を放棄したのですか。明らかにヤルタ協定に基いているのでしよう。

 

第13回国会 衆議院 予算委員会 第25号 昭和27年5月15日

○小平(忠)委員

総理大臣にお伺いいたします。

わが国が独立の第一歩を踏み出しましたことはまことに喜びにたえません。

しかしながら国際的に解決を要する問題がたくさんあります。

特にその中でも領土問題といたしまして、千島列島の中で特に歯舞諸島並びに色丹の領土返還につきましては、御承知のように昨年九月米国サンフランシスコにおける平和会議で、総理が首席全権として熱情を打込んでこの領土問題の解決のために万丈の気を吐かれたのであります。

しかるにこの問題は独立と同時に——口では独立ということを言いますけれども、いかなる方法をもつてこの返還問題を具体的に処理して行くか、これは国民としてきわめて大きな問題であります。

この機会に総理大臣からこの千島列島、特に歯舞、色丹の領土返還について、今後いかなる所信と、いかなる方法、いかなるお考えをもつて善処せられるのか、国民の納得の行く御答弁をお願いいたしたいと思います。

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○岡崎国務大臣

歯舞、色丹島の問題につきましては、たびたび申しておりますように、これは当然日本の領土になるべきものと考えております

ただ力をもつてこれを占拠されておる間はいかんともしがたい場合もあるのでありますが、人盛んなれば天に勝つといいますけれども、またそのうち運命が定まつて来れば天が勝つのでありまして、当然日本の正当な要求が貫かれると思います。

いろいろ外交関係につきましても、利益保護国というようなものがありまして、たとえば日本の利益を代表して交渉してくれる国が従来もありましたし、今後もあるわけでありますので、それぞれ適当な方法でこの問題の解決に努力するつもりでおります。

また只今申しましたようないろいろの事情から、政府としてはモスクワ経済会議に対する旅券を出さないということに決定をいたしました。

これは政府の立場であります。

法を適当にくぐつてソ連に入国する人があつた場合には、帰つて来てからその事情を十分調査いたしまして、罰すべきものがあれば罰します、これは今後の問題になります。

しかし政府の態度としては、かかるいろいろの懸案があるこの際、モスクワ経済会議に人を派するということは、おもしろくないという立場を維持しておるわけであります。

 

○小平(忠)委員

私はただいまの問題について、岡崎外務大臣に答弁を願つたのじやなくして、吉田総理大臣に答弁を願つたのであります。

千島列島の中で特に歯舞、色丹の問題は、これは総理大臣が首席全権としてあのサンフランシスコにおきまして熱情を打込まれた問題でありますから、実は総理大臣御自身の御答弁を願つたのであります。

ぜひこの機会に独立して再出発した日本のこの国会を通じてこの問題について御答弁ありたい。

 

○吉田国務大臣

外務大臣の答弁は、すなわち私の答弁と御承知を願つておきます。

 

第13回国会 衆議院 外務委員会 第27号 昭和27年5月28日

○岡崎国務大臣

ただわれわれとしては、台湾、澎湖島に対する権利、権原は放棄したけれども、これはどこの領土であるということを規定する立場にない。

従つてわれわれとしては放棄しただけである。

これは連合国がきめる問題になるわけであります。

たとえばわれわれとしては、話はまるで違いますけれども、ヤルタ協定というものはない、われわれの目から言えばないものだということは言つておりますけれども、樺太なり千島——これは定義はきまつておりませんが、千島というものの権利、権原は放棄しておる。

それがどこに帰属するかということについては、これは連合国がきめる問題だ。

こういうわれわれは立場をとつておるわけであります。

https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X02719520528/161

 

領土問題に関する決議(1952.7.31)

領土に関する決議

昭和 27 年 7 月 31 日

衆議院本会議可決

 

平和條約の発効に伴い、今後領土問題の公正なる解決を図るため、政府は、国民の熱望に応えてその実現に努めるとともに、特に左の要望の実現に最善の努力を拂われたい。

一、 歯舞、色丹島については、当然わが国の主権に属するものなるにつき、速やかにその引渡を受けること。

二、 沖縄、奄美大島については、現地住民の意向を充分に尊重するとともに、差し当り教育、産業、戸籍その他各般の問題につき、速やかに、且つ、広い範囲にわたりわが国を参加せしめること。なお、右に関して奄美大島等については、従来鹿児島県の一部であった諸事情を考慮し特別に善処すること。

三、 小笠原諸島については、先ず旧住民の復帰を実現した上、教育、産業、戸籍その他各般の問題につき、速やかに、且つ、広い範囲にわたりわが国を参加せしめること。

 

右決議する。

 

 

第14回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和27年8月28日

○戸叶委員 北澤直吉委員と調査員武川氏と不肖私が北海道の観察班といたしまして、八月十一日から十日間北海道視察に参りました。
まず千歳地区の調達関係について御報告申し上げます。
調達されている私有の土地が全体で五百八十三万三千百九十四坪になつております。移転を命ぜられた住民の補償で、そのうち五〇二五号地域の住民で建物の移築費用のみの補償を受けたが、移転料等の補償を受けなかつた者がある。それから五〇〇二号地域の住民で旧日本海軍の施設を借り受け企業していた職工二世帯、急に移転命令を受け立ちのいたが、機械の一部は搬出できなかつたため、そのまま軍が収用しているが、これについては何らの補償を受けていないということが一つ。
また五〇〇二号地域の状況について申し上げますならば、昭和二十六年十一月土地所有者の委任を受けた千歳町長と札幌特別調達局管財部長との間に賃貸契約書が手交されましたが、この期間は昭和二十六年四月一日から昭和二十七年三月三十一日までとし、居住者やこの地域内で事業を行つている者は、そのまま継続してさしつかえないとの條件でありましたが、現状は通行禁止の道路や立入り禁止の地域があり、事業遂行上の支障があつて、非常に問題になつております。
五〇一八地域の状況は、基地整備の業者の資材置場等のため耕地に損害がありましたが、補償を受けておりません。
五〇二五地域の状況は、立木を倒したまま放置せられたため、害虫が発生し、駆除に困難があり、立木の被害著しいが、まだ補償されておりません。以上が千歳町長からの陳情でございます。
次に農林省の北海道農業試験場畜産部、これは北海道の札幌市外にあるのでありまして、敷地調達関係を申し上げます。同試験場の敷地は千百二町歩あり、現在その過半が駐留軍の演習場として使用されております。駐留軍は合同委員会に対して、右敷地中六百町歩の調達方を申し出ておりますが、試験場としては四百町歩程度にとどめたく、しかも共同使用として演習の妨げにならぬ限り、羊、牛馬の放牧に使用したいという、そういう強い希望をこの農業試験場長が持つております。
次に歯舞諸島及び色丹島並びに千島列島返還懇請問題でございます。またもう一つは漁船、漁夫拿捕問題でございます。歯舞諸島及び色丹島は地理的及び歴史的に北海道に属し、千島列島とは別個であるということ。千島列島のソ連への引渡上はヤルタ協定の規定するところであるが、同協定の内容は昭和二十一年二月十一日公表されるまでわが国には知られなかつたということ、わが国はポツダム宣言を受諾して終戰したのであるが、同宣言には「カイロ宣言の條項は履行せらるべく」とあり、しかもカイロ宣言は連合国に領土拡張の意図のないことを表明し、千島列島の割譲には何ら触れておりません。従つて同列島の返還を要望する。
三番目に平和條約第二條の規定を承認して千島列島の放棄をやむを得ないとするも、国後島及び択捉島は除外さるべきことを望む、けだし右二島は歴史的にも本邦人の過去の足跡が古く、また明治八年の樺太、千島交換條約の対象ともならなかつたのであります。
四番目に平和発効に伴うマツカーサー・ライン撤廃後は従来のマツカーサー・ライン内においても漁船漁夫の拿捕がソ連監視船によつて行われることがある。その理由を忖度するに、歯舞、色丹諸島を占領するソ連は、右諸島沿岸より十二海里の領海を主張して、右範囲内に入る外国漁船、漁夫を拿捕するのではないかと思われるのであります。本年四月ないし七月末の間における漁船漁夫の拿捕及び帰還状況は次の通りであります。拿捕船が二十六、拿捕人員が二百三、帰還船二十一、帰還人員が百六十六、未帰還船が四、未帰還人員が三十二、以上の通りでございます。
発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101403968X00119520828/4

 

第14回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和27年8月28日

○戸叶委員 北澤直吉委員と調査員武川氏と不肖私が北海道の観察班といたしまして、八月十一日から十日間北海道視察に参りました。
まず千歳地区の調達関係について御報告申し上げます。
調達されている私有の土地が全体で五百八十三万三千百九十四坪になつております。移転を命ぜられた住民の補償で、そのうち五〇二五号地域の住民で建物の移築費用のみの補償を受けたが、移転料等の補償を受けなかつた者がある。それから五〇〇二号地域の住民で旧日本海軍の施設を借り受け企業していた職工二世帯、急に移転命令を受け立ちのいたが、機械の一部は搬出できなかつたため、そのまま軍が収用しているが、これについては何らの補償を受けていないということが一つ。
また五〇〇二号地域の状況について申し上げますならば、昭和二十六年十一月土地所有者の委任を受けた千歳町長と札幌特別調達局管財部長との間に賃貸契約書が手交されましたが、この期間は昭和二十六年四月一日から昭和二十七年三月三十一日までとし、居住者やこの地域内で事業を行つている者は、そのまま継続してさしつかえないとの條件でありましたが、現状は通行禁止の道路や立入り禁止の地域があり、事業遂行上の支障があつて、非常に問題になつております。
五〇一八地域の状況は、基地整備の業者の資材置場等のため耕地に損害がありましたが、補償を受けておりません。
五〇二五地域の状況は、立木を倒したまま放置せられたため、害虫が発生し、駆除に困難があり、立木の被害著しいが、まだ補償されておりません。以上が千歳町長からの陳情でございます。
次に農林省の北海道農業試験場畜産部、これは北海道の札幌市外にあるのでありまして、敷地調達関係を申し上げます。同試験場の敷地は千百二町歩あり、現在その過半が駐留軍の演習場として使用されております。駐留軍は合同委員会に対して、右敷地中六百町歩の調達方を申し出ておりますが、試験場としては四百町歩程度にとどめたく、しかも共同使用として演習の妨げにならぬ限り、羊、牛馬の放牧に使用したいという、そういう強い希望をこの農業試験場長が持つております。
次に歯舞諸島及び色丹島並びに千島列島返還懇請問題でございます。またもう一つは漁船、漁夫拿捕問題でございます。歯舞諸島及び色丹島は地理的及び歴史的に北海道に属し、千島列島とは別個であるということ。千島列島のソ連への引渡上はヤルタ協定の規定するところであるが、同協定の内容は昭和二十一年二月十一日公表されるまでわが国には知られなかつたということ、わが国はポツダム宣言を受諾して終戰したのであるが、同宣言には「カイロ宣言の條項は履行せらるべく」とあり、しかもカイロ宣言は連合国に領土拡張の意図のないことを表明し、千島列島の割譲には何ら触れておりません。従つて同列島の返還を要望する。
三番目に平和條約第二條の規定を承認して千島列島の放棄をやむを得ないとするも、国後島及び択捉島は除外さるべきことを望む、けだし右二島は歴史的にも本邦人の過去の足跡が古く、また明治八年の樺太、千島交換條約の対象ともならなかつたのであります。
四番目に平和発効に伴うマツカーサー・ライン撤廃後は従来のマツカーサー・ライン内においても漁船漁夫の拿捕がソ連監視船によつて行われることがある。その理由を忖度するに、歯舞、色丹諸島を占領するソ連は、右諸島沿岸より十二海里の領海を主張して、右範囲内に入る外国漁船、漁夫を拿捕するのではないかと思われるのであります。本年四月ないし七月末の間における漁船漁夫の拿捕及び帰還状況は次の通りであります。拿捕船が二十六、拿捕人員が二百三、帰還船二十一、帰還人員が百六十六、未帰還船が四、未帰還人員が三十二、以上の通りでございます。
発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101403968X00119520828/4

 

第15回国会 衆議院 外務委員会 第2号 昭和27年11月25日

○安東委員

時間をとつてはなはだ恐縮でありますが、きのうの総理の演説中に領土問題がありました。

南西諸島等について、相当はつきりした意図が出ておつてけつこうでありますが、千島に関しては歯舞、色丹だけを指摘しておつて、その他の地域については何も言つてない。これはどういうわけでありますか。

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○岡崎国務大臣

千島につきましては、われわれは平和条約においてこれを日本の領土から除くということに、つまり千島に対する権利権原等を放棄するということが書いてありますので、私たちは千島については平和条約の条項を誠実に履行するという意味で問題にするつもりはないのであります。

ただそれが千島とは何ぞやという定義の問題になれば、これはいろいろ意見があります。

たとえば明治の初年に樺太と交換したときの千島も千島と称されております。これは北部の島々のみで、南の方の島は入つておりません。

しかし歯舞、色丹は別でありますが、国後、択捉島、ああいうところも含めて千島と称しておる場合もあり、それから北の方の部分だけを千島と称しておる場合もあり、この千島の定義については、また将来議論の余地がかなりあると考えておりますが、どれが千島であるかということが決定すれば、その千島に対してはわれわれは権利権原を放棄する、こういうつもりでおります。

 

○安東委員

しからば千島の解釈について、まだ政府ははつきりした見解を定められていない。

従つてそこは弾力性があるものだというふうに私ども解釈いたしますが、しかし日本は平和条約によつて一応あそこの千島全体を放棄したようになつておるのです。

しかし千島を放棄させられる根本理由は、はなはだわれわれとしては納得できない。

アメリカの大西洋憲章に対する態度においても、イギリスの大西洋憲章に対する態度においても、日本が千島を侵略してとつたものでないことはよく知つておるはずであります。

それをヤルタ秘密協定でああいう約束をしたからといつて、日本から永久にこれを奪取してしまうということは、これは民主主義的な国家として最も恥ずべきことであろうと思うのであります。

日本の民族領土を永久に捨てる気持はわれわれには毛頭ございません。

この主張を今日においてソ連とやつたところで、これは話はつかぬところでありましようけれども、少くとも民主主義諸国に対しては日本の立場を明らかにして、日本は千島を永久に放棄するものではないということだけは、いずれかの機会においてはつきりしていただきたいと思つておるのであります。

 

第15回国会 衆議院 外務委員会 第14号 昭和28年2月4日

○並木委員

ヤルタ協定が廃棄されれば、あの中に含まれている千島列島はもちろんのことでありますが、樺太の南部及びこれに隣接する一切の島嶼、これも当然含まれて来ると思うのです。

従つてわれわれは今度の平和条約の基礎になつたヤルタ協定が廃棄になれば、平和条約の実質的変更ということになると思う。

この場合千島列島のみならず、当然南樺太も含まれて来ると了解いたしますけれども、それでよろしゆうございますか。

 

○岡崎国務大臣

これはまだアメリカがどの協定を廃棄するということは言つておりませんで、ヤルタ協定にしても、多分そうなるのじやないかという想像でありますからわかりませんが、もし仮定でヤルタ協定を云々ということになれば、ヤルタ協定に含まれている南樺太も入るのじやないかと思います。

但し日本としては、とにかく平和条約に調印しまして批准も済ませております。それでこの地方における権利、権原は廃棄するということになつております。

ただその定義が、たとえば千島というのはどこまでのものが千島であるか、定義は別問題であります。

従つて実質上はお話のように、かりにそれが実現して、ほんとうに実質的にもそういうところが宙ぶらりんになる場合もありましようけれども、今のところは実際上はソ連側が占拠しておるわけでありますから、これは実際の問題としてはどうなりますか、要するにまたソ連側からすれば、ヤルタ協定を一方的に破棄してもだめだろうという議論もありましようから、もう少し様子をみなければわかりません。

 

○並木委員

その大臣のあれでいいのです。仮定としてお答えになつてけつこう、また今の平和条約できまつているということを、われわれは男らしく履行するということもけつこうなんです。

しかしもしそれが実現されますと、ヤルタ協定そのものが廃棄されますから、その当事者の間では効力を失うわけでございます。

そうすると南樺太や千島は宙に浮いて来る、その場合に帰属はおそらく平和条約に調印している連合国の間できめられる、こういうふうに了解すべきものであるが、われわれの気持としては、当然元の日本に返してくれ、こう言いたいところですが、国際条約上の慣例もありましようし、その点はどういうふうに解釈したらよろしゆうございますか。

 

○岡崎国務大臣

これは総理大臣も参議院で答弁されたと思いますが、従来からこういう自然に日本に来た領土については、できるだけ日本側につくように努力をしておられる、千島その他の島々もそれに入るのだという趣旨の答弁をしおられます。

われわれもそれを希望することは当然そうでありますけれども、まだ廃棄をしたという発表もしませんし、また廃棄したからといつてすぐそれが有効になるかどうか、片方ではそれは承知しないという議論が出て来ましようし、もう少し時期を待たないと国民にあまり強い根拠のない希望を抱かせるというようなことになつてもたいへんでありますから、もう少し慎重に取扱いたいと思います。

 

第16回国会 衆議院 本会議 第18号 昭和28年7月7日

○上塚司君

ただいま議題となりました領土に関する決議案につき、小会派クラブを除く各党派を代表いたしまして、その趣旨を弁明いたします。

まず、決議案の全文を朗読いたします。

 

領土に関する決議案

平和条約の発効以来、歯舞及び色丹島等の復帰を図ることは、わが国民あげての宿望であり、また、沖繩、奄美大島、小笠原諸島等が内地の施政から切り離されている不便を除去することも国民久しく切望し来つたのである。本院においても、院議をもつてしばしばこれを要望したが、いまなお、その実現を見るに至らないことは、国民のひとしく遺憾に堪えないところである。

よつて政府は、速やかにこれら諸島が完全にわが国に帰属するよう最善の措置を講ずべきである。

右決議する。

 

サンフランシスコで署名せられました平和条約は、すでにその効力発生後一年有余に及び、わが国民は領土問題の公正なる解決を希望すること切なるものがあります。

本案におきましても、同条約に関連してしばしば熱心に論議せられ、特に昨年七月には領土に関する決議、同年十二月には奄美大島に関する決議等をもつて、政府に対しすみやかに適切なる措置を講ずべきことを要望いたした次第であります。

しかるに、政局の努力にもかかわらず、今日に至るもさしたる進捗を見ないことは、まことに遺憾にたえない次第であります。

そもそも一国の領土はその国民の歴史的、精神的渕源であり、その国民的感情に重大なる影響を及ぼしますことは、いまさら言うまでもないところであります。

さらに、わが国が八千五百万の人口を擁し、領土は平和条約により四大島及びその付属小島嶼に限定せられました今日において、零細な土地でも国民の生存及び経済の自立にはまことに貴重なる一部であるごと、また理の当然であります。

決議案の最初にあげました歯舞及び色丹島につきましては、平和条約において、わが国は千島列島に対する権利を放棄するのやむなきに至りましたが、これらの諸島が連合国のいずれの国に帰属すべきかは平和条約において確定しておりません。

昭和二十年二月、米、英及びソ連三国間に結ばれましたヤルタ協定は、千島列島はソ連邦に引渡すと定めておりまするけれども、元来この協定は、これら三国がひそかに締結いたしました協定でありまして、直接にわが国を拘束するものではありません。

かつ、千島列島の範囲、限界につきましては、すこぶる明瞭でなく、関係各国の意見も必ずしも一致していないようであります。

わが国の立場から申しますれば、従来日露間の交渉案件となりました安政元年の日露和親条約、明治八年の樺太千島交換条約に掲げられました千島は、いわゆる北千島及び中千島でありまして、択捉、国後島のいわゆる南千島を含むものではありません

従つて、条約等に現われた千島は、いわゆる北千島及び中千島だけをさしたものと解釈することが歴史家の通説であります。

さらに、そのはるか南方に位します歯舞諸島、色丹島に至りましては、地理上及び地質上もまつたく千島列島ではありません。

その事実は、連合軍総司令部の占領中に出しました公式文書にも明らかにこれを認めており、サンフランシスコ平和会議の際のダレス米国代表の演説においてもこれを明らかにいたしております。

ただ、戦時中わが国の千島守備隊司令官のもとに守備せられておりましたため、降伏の際、千島諸島とともに同時にソ連軍に占領せられた偶発的事情がありまして、今日なおそのままに占領が継続されておるにすぎないのであります。

ソ連とわが国とはいまだ平和の回復を見ていないのでありますが、政府は、あらゆる可能なる方法をもつて、これら諸島の日本復帰について努力されんことを要望するものであります。

次に、沖繩、奄美大島及び小笠原諸島につきましては、平和条約において、わが国は、これら諸島が米国を唯一の施政権者とする国際連合の信託統治制度のもとに置かれることを承認し、かつ信託統治が実現せられるまで、米国がこれら諸島の領域及び住民に対して行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有することを認めたのであります。

しかるに、これら諸島に対する米国の信託統治は、現下の国際情勢上なかなかにその実現に困難な事情がありまして、前述の平和条約の規定により、いまなお米国の行政、立法及び司法上の権力が行使せられているのであります。

元来、これら諸島は、すでに永年にわたり、わが国の領土の一部として、歴史的、地理的かつ経済的に、日本本土と密接不可分の関係にあり、国民はすみやかに内地の施政に統一せられんことを切望しており、島民はこぞつて内地施政との分離の現状に不便、苦痛を痛感し、あるいは陳情団を中央に派遣し、あるいは全島民の署名運動その他あらゆる手段を尽してその熱望を訴えている次第であります。

もしこれら諸島の日本完全復帰が早急に実現困難であるならば、さしあたり教育、産業、戸籍その他各般の問題につき、すみやかに、かつ広い範囲にわたりわが国を参加せしむるよう、政府において格段の努力を要望するものであります。

なかんずく奄美大島につきましては、従来最も本土に近接し、鹿児島県の一部でありました関係上、本土住民との血縁的関係もきわめて深く、住民の熱望も最も切実でありますので、政府においても特別の考慮を払わるるよう要望にたえません。

さらに、小笠原島につきましては、日本国民たる旧住民は全部内地に引揚げておりまする関係上、まずこれら住民の帰還を一日もすみやかに実現するよう政府に要望するものであります。

何とぞ各位の御賛同を得まして、全会一致可決あらんことを切望いたします。(拍手)

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第17回国会 衆議院 本会議 第9号 昭和28年11月7日

○上塚司君

ただいま議題となりました領土に関する決議案につき、各党派を代表して提案理由を説明いたします。

まず決議案の全文を朗読いたします。

 

領土に関する決議案

平和条約の発効以来、歯舞及び色丹島等の復帰を図ることは、わが国民あげての宿願であり、久しく待望しつつあつたところである。本院においても、院議をもつてしばしばこれを要請し来つたのであるが、いまなお、その実現を見るに至らないことは、国民ひとしく遺憾に堪えないところである。

本院は、よつて政府が、速やかにこれら諸島が完全にわが国に帰属するよう最善の措置を講ずべきことを要望する。

右決議する。

 

〔拍手〕
歯舞、色丹島の領土復帰に関しましては、第十六国会において領土に関する決議案として採択を見たのであります。この歯舞、色丹島につきましては、平和条約においてわが国は千島列島に対する権利を放棄するのやむなきに至りましたが、これら諸島が連合国のいずれに帰属するかは平和条約において確定しておりません。

昭和二十年二月米英及びソ連三国間に結ばれましたヤルタ協定は、千島列島はソ連に引渡すと規定しておりまするけれども、元来この協定は、これら三国がひそかに締結いたしました協定でありまして、直接にわが国を拘束するものではありません。

かつ千島列島の範囲、限界につきましては、すこぶる明瞭でなく、関係各国の意見も必ずしも一致いたしていないようであります。

わが国の立場から申しますれば、従来日露間の交渉案件でありました安政元年の日露和親条約、明治八年の樺太千島交換条約に掲げられました千島は、いわゆる北千島、中千島でありまして、択捉、国後等のいわゆる南千島を含むものではありません。

従つて、条約等に現われた千島は、いわゆる北千島及び中千島だけをさしたものと解釈することが歴史家の通説であります。

さらにそのはるか南方に位します歯舞及び色丹島に至りましては、地理上、地質上もまつたく千島列島ではありません

その事実は、連合軍総司令部の占領中に出しました公式文書にも明らかに認めており、またサンフランシスコ平和条約の際のダレス米国代表の演説においてもこれを明らかにいたしております。

ただ、戦時中わが国の千島守備隊司令官のもとに守備せられておりましたため、降服の際千島諸島とともに同時にソ連軍に占領せられ、今日なおそのままに占領が継続されておるにすぎないのであります。

ソ連とわが国とは、いまだ平和の回復を見ていないのでありますが、政府は、あらゆる可能なる方法をもつて、これら諸島の復帰について努力されんことを要望するものであります。

何とぞ各位の御賛同を得まして、全会一致可決あらんことを希望いたします。(拍手)

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1954年(昭和29年)12月10日 第5次吉田内閣 解散

吉田内閣は、1946年(昭和21年)5月22日から1954年(昭和29年)12月10日まで続いた。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E5%86%85%E9%96%A3

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