放射性壊変

元素には,陽子の数が同じ(同じ原子番号)で,中性子数の数が異なる同位体( isotopes :同位元素ともいう)が存在する。

同位体は,放射性壊変(放射性崩壊)せずに安定して存在できる安定同位体( stable isotope ),放射性壊変する放射性同位体( radioactive isotope )に分けられる。

放射性壊変とは、原子核が自発的に核変換や核分裂し、粒子又はγ線が放出され、若しくは軌道電子捕獲によってX線が放出される現象。放射性壊変で生じた核種は娘核種と呼ばれる。

α壊変

 原子核から放出される粒子がα粒子(ヘリウムの原子核)の放射性壊変をα壊変という。
 この放射性壊変によって元の核種の原子番号は 2 減り,質量数は 4 減る。放出されるヘリウム原子核をα線と呼ぶ。

α壊変の例(イメージ図)

α壊変の例(イメージ図)

β壊変

原子核がβ粒子(電子,又は陽電子)を放出,又は原子核が軌道電子を捕獲することによる核変換をβ壊変という。β壊変は,β壊変,β壊変,軌道電子捕獲の 3種類に分けられる。
 

β-壊変

 中性子が電子( electron )と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象をいう。この放射性壊変によって元の核種の原子番号は 1 増え,質量数はほとんど変わらない。放出される電子をβ線と呼ぶ。
 一般的には,安定同位体より中性子の多い核種で発生する。なお,単にβ壊変といった場合は,この現象を指す。

 β+壊変

 陽子が陽電子( positron )と電子ニュートリノを放出して中性子になる現象をいう。この現象は,陽電子壊変( positron decay )とも言われる。この放射性壊変によって元の核種の原子番号は 1 減り,質量数は変わらない。放出される陽電子もβ線と呼ばれる。
 一般的には,安定同位体よりも中性子の少ない核種で発生する。

電子捕獲壊変と競合する。

 軌道電子捕獲( orbital electron capture )

 陽子が核外電子(軌道電子)を捕獲し,電子ニュートリノを放出して中性子になる現象をいう。一般的には略して電子捕獲( electron capture )とい場合が多い。この放射性壊変によって元の核種の原子番号は 1 減り,質量数は変わらない
 この現象では,捕獲された電子の軌道に外殻の電子が遷移する緩和過程で特性X線またはオージェ電子を放出する。

β壊変の例(イメージ図)

β壊変の例(イメージ図)

β+壊変と競合する。

γ崩壊( gamma decay )

 励起した原子核が,電磁波(γ線)を放出してエネルギー状態を安定化させる現象をγ崩壊と呼ばれる。しかし,γ崩壊は,α壊変やβ壊変とは異なり,核種が変わらない(原子番号や質量数が変わらない),すなわち核変換が起きていないので,放射性壊変の定義に一致しない現象である。

 原子核が外部からエネルギーを与えられた場合,又はα壊変やβ壊変で生じた娘核種が励起状態にある場合など,原子核の励起状態から緩和する過程で準位間のエネルギー差に等しいγ線を放出する。

 この現象は,核異性体転移( isomeric transition )と呼ばれる。核異性体転移には,γ線放出の他に核外電子を放出する内部転換( internal conversion )も含まれる。

 γ線源として利用されるコバルト60は,β壊変でニッケル60になる過程で,図に示すように,励起された状態のニッケル 60 を経由し 1.17 MeVと 1.33 MeVの 2本のγ線を放出する。

内部転換

核異性体転移によってγ線を出す際に、まれにγ線のエネルギーを軌道電子に与えて軌道電子を放出することがあり、この現象を内部転換といい、放出される電子を内部転換電子といいます。

またその後、内部転換電子を放出した空孔を埋めるために外殻から起動電子が遷移し、余った束縛エネルギーが特性X線またはオージェ電子として放出されます。

内部転換係数

内部転換電子を放出する割合は内部転換係数で表されます。

$$ 内部転換係数α=\frac{内部転換電子P_e}{γ線P_γ} $$

また、核異性体転移では内部転換電子の放出かγ線放出しか起きないため、割合の合計は

$$ P_e + P_γ = 1 $$

となり、ここから核異性体転移を起こした場合にγ線を放出する割合を算出できます。

\begin{align}
P_γ &= \dfrac{P_γ}{P_γ+P_e} \\
&= \dfrac{1}{1+\frac{P_e}{P_γ}} \\
&= \dfrac{1}{1+α} \\
\end{align}

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