古典物理学
古典力学(非相対論的力学)
古典力学は、巨視的なスケール(目に見えるくらいの大きさ)で、光速よりも十分遅い速さの運動を扱う際の理論です。
ニュートン力学
物体に作用する力の釣り合い(静力学)は古代ギリシャ時代に始まり、物体の運動(動力学)の基本理論体系はガリレオ・ガリレイに始まりました。これらをアイザック・ニュートンが力学として確立し、ニュートン力学と呼ばれます。
ニュートン力学では、物体の運動に関して以下の三つの法則を基本とします。
第1法則(慣性の法則)
質点は外部から力が作用しない限り、静止または等速直線運動する。
第2法則(ニュートンの運動方程式)
質点の加速度は、そのとき質点に作用する力に比例し、質点の質量に反比例する。
$$ a = \frac{F}{m} $$
第3法則(作用・反作用の法則)
質点1と質点2の間に相互に力が働くとき、質点2から質点1に作用する力と、質点1から質点2に作用する力は、大きさが等しく、逆向きである。
また、慣性系(慣性の法則が成立している座標系)であれば、ニュートンの運動方程式が成り立つとされました(ガリレイの相対性原理)。
解析力学
ニュートン力学は複雑な幾何学で記述されていましたが、ラグランジュやオイラーが力学原理を数学的に記述しました。
これにより、エネルギー保存則や運動量保存則、角運動量保存則、電荷の保存則など様々な保存則を数学的に導くことができるようになりました。
解析力学は後に電磁気学や現代物理学の基礎となりました。
古典電磁気学
電荷と電流の間の電磁気力について研究する電気学と磁気学は別の学問でしたが、クーロンの法則の発見、エルステッド、アンペールの法則、ファラデーの電磁誘導の発見により、電気と磁気が互いに関係することが分かりました。
後にジェームズ・クラーク・マクスウェルによって発表されたマクスウェルの方程式により、電気学と磁気学が統合されました。
現代物理学(相対論的力学)
アインシュタインの相対性理論を基礎として発展した物理学を現代物理学といいます。
相対性理論
マクスウェルの方程式では、光(電磁波)の速度が一定であることが分かりましたが、これはニュートン力学での「観測者の運動状態によって速度は変化する」ことと矛盾していました。
アインシュタインは特殊相対性理論で「光速度が一定になるように観測者の時間の流れと空間の大きさが変化する(ローレンツ変換)」と考えることによって、マクスウェルの方程式におけるニュートン力学との矛盾を解決しました。さらに一般相対性理論で、どのような運動状態(座標系)でもこれが成り立つ理論を提唱しました。
これにより古典力学と電磁気学が融合し、新しい運動法則として量子力学が生まれました。
$$ m = m_0 \frac{1}{\sqrt{1-β^{2}}} \quad , \quad β=\frac{v}{c} $$
量子力学
量子力学では分子、原子、原子核、素粒子などの微視的な物理運動を扱う理論です。
なお、微視的に対して巨視的という用語は、個々の粒子の運動ではなく莫大な数の粒子の集団全体の物理的特徴に注目します。この場合、粒子集団の運動は古典力学で考えます。
量子の世界では物質は二重性(粒子性と波動性)を持つため、物質の粒子性だけに注目する運動方程式では電子の運動を厳密には記述することはできません。物体の運動は決まった軌道を持たず、いろいろな軌道を描く運動を足しあわせることによって観測できる最終状態の確率が計算できると考えます。
量子力学的法則の認識は1900年のプランクの放射公式に始まります。
アインシュタインは、この公式が光に波動性と粒子性の二つを同時に持つことを示すと提唱しました(光量子仮説)。
1913年ボーアは、古典力学を用いて得られる水素原子の電子軌道のうち、現実に軌道として可能なものを選択する条件(量子条件)と、光放出の新しいメカニズムを導入しました。
$$ 2πr_n=\frac{h}{mv} n \quad(n=1,2,3・・・) $$
1925年ハイゼンベルクは、ボーアの理論を出発点としてこれを新しい力学につくりかえ、ここに量子力学が誕生しました。
1923年ド・ブロイは、電子もまた波動性を持つことを予見しました。
$$ λ=\frac{h}{p}=\frac{h}{mv} $$
1926年シュレーディンガーが粒子の波動方程式を見出し、量子力学の基礎が確立しました。
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