http://kanamri.umin.ne.jp/36_1_1_PDF.pdf
SE法
自由誘導減衰の信号では、90度パルスを印加して信号を得ても信号は弱く、組織の信号差も付けられないため、緩和の始まった磁化ベクトルを再収束させて強い信号を得る必要があります。これがスピンエコー法です。
スピンエコー法の簡単な流れとは、
➀90°RFパルスの印加(横磁化の発生)
➁プロトンの位相がバラバラになりながら緩和現象が起こる(横磁化が小さくなり、縦磁化の増加)
➂180°RFパルスの印加
➃MR信号
となり、➀~➃を位相エンコード方向分だけ繰り返すことで画像を作り上げています。
スピンエコー法の利点は、MR信号を得る前に180°RFパルスを印加することで、磁場の不均一性を打ち消せることです。磁場の不均一は画像の歪みとなって表れてしまうため、その影響をなくすことができることは、画質の良さに直結しています。
つまり、180°RFパルスを使用するようなスピンエコー法は磁化率の変化に強い撮像法といえます。
しかし、スピンエコー法には決定的な問題点があります。
それは、一枚のMR画像を得るのに時間がかかることです。
スピンエコー法という撮像法の特性上、90°RFパルスを印加して、横磁化を作り、そしてTE/2時に180°RFパルスを印加しTE時間後にMR信号を得たのち、縦磁化が完全に回復するまで待ってから次の90°RFパルスを印加する方法です。
MR信号を得てから、縦磁化が回復するまで何もすることなく待つため、一回のTRで得られるMR信号は、自ずとひとつだけになってしまいます。
T2強調像を撮像するとき
たとえば、
TR=2000ms
位相エンコード数=256
加算回数=2
2000ms×256行×1回=1024000ms=1024秒
=17分4秒
T1強調像を撮像するとき
たとえば、
TR=500ms
位相エンコード数=256
加算回数=2
500ms×256行×1回=256000ms=256秒
=4分16秒
高速スピンエコー法(FSE法)のシーケンス
高速(fast)スピンエコーシーケンスは、基本的には90°RFパルスと180°RFパルスを使用する通常のスピンエコーシーケンスですが、大きく違うのは、一度のTR間で、何度も180°RFパルスを印加する点です。
スピンエコー法では、90°⇒180°⇒90°⇒180°・・・という順番でしたが、高速スピンエコー法は、90°⇒180°⇒180°⇒180°・・・⇒90°⇒180°⇒・・・といったような感じになります。
では、一度のTR中に180°RFパルスを何度印加するとどのような効果があるのでしょうか。
それは、一度のTRで一つのエコー信号しか得られないのではなく、一度のTR中に多くのエコー信号を作成し、収集することができ、そこで得られた信号をk空間の別々のラインに書き込むことで、時間の短縮を行っているのです。一度に多くの信号を埋めることが可能ということです。
例えば、90°RFパルス後に5個の180°RFパルスを使うと、1回のTRで、5つのエコーが得られ、k空間の5行を埋めることができます。結果的に、k空間を埋める時間が5分の1になり、撮像時間が短くなるのです。
この1回のTRの間に作られたエコーの数を”ターボファクタ(TF=turbo factor)”または”エコートレインレングス(echo train length)”と呼ばれています。
撮像時間短縮
スピンエコー法でT2強調像を撮像するとき
TR=2000ms
位相エンコード数=256
加算回数=2
2000ms×256行×2回=1024秒=17分4秒
に対し、
加算回数(NEX) Average
信号が少なく良い画像が得られない(ざらざらした画像の)場合には、信号の量が少ないことを意味しています。そのためには、撮像する過程を繰り返すことが必要です。
この繰り返す回数を加算回数と言い、加算回数を2回に増やすと検査時間は2倍になりますが信号強度(SNR:信号とノイズの比率)は1.4倍しか増加しません。加算回数の平方根に比例して信号強度が上がります。
Kスペースの埋め方
1回のTR中に得られる信号強度は、時間がたったものほど段々と弱くなっているということです。
90°RFパルスによって作られた横磁化は、緩和曲線に従って、時間とともに減衰していきます。
しかし、横磁化の大きさは、180°RFパルス後に得られるエコー信号の強度に比例しているため、緩和が進むほどにエコー強度は弱まることになってしまうのです。
よって、高速スピンエコー法により得られた画像は異なる強度のエコー信号によって作られている画像ということになります。
実効TE
高速スピンエコー法では、一度のTR中に180°RFパルスを何度も印加しますが、その時の位相エンコーディング傾斜磁場はそれぞれ異なります。
毎回の180°RFパルスごとに同じ強度の位相エンコーディング傾斜磁場を使用してしまうと、k空間の同じ行に信号が埋まることになりますが、それでは時間は短縮することになりません。異なる信号を別々の行に埋めるからこそ時間を短縮することが可能なのです。
位相エンコーディング傾斜磁場は、得たエコー信号をk空間のどの行を埋めるかを決める因子です。
このことから、k空間のどの行にどのような強度を持った信号を埋めるのかも重要です。
なぜなら、k空間の中央は画像コントラストを決定し、外側のラインの信号は画像の空間分解能を決めるからです。
重要視される画像コントラストを決定するk空間の中央には、信号強度が大きいエコーが埋められることになり、弱い信号はk空間の外側に埋まっていくことになります。
そして、k空間の中央を埋める信号を得られたときの時間を実効TEと呼ばれています。画像の全てを握る信号がk空間にいつ埋められたかを重要としているようです。
ETL(エコー数)
エコートレインが長い場合、非常に遅いエコー信号の強度はかなり低下しています。その低下している信号もk空間の外がを埋めるの使うため、自ずと空間分解能が低下してしまうのです。
エコースペース
T2減衰によるボケ
Jカップリング効果
高速スピンエコー法によって、得られた画像コントラストは通常のスピンエコー法による画像とは明らかに違う点があります。
どのような違いかというと、T₂強調・高速スピンエコー法では、水と脂肪が特に明るく描出されるということです。
これは、Jカップリング効果によるものなのですが、これは物理的説明が難しすぎるので、省略いたします。
とにかく、高速スピンエコー法では、繰り返し180°RFパルスを印加し、Jカップリングという相互作用に影響を与えるために画像コントラストは特有のものとなるということ。
そして、影響を受ける代表的な組織として、水と脂肪が挙げられ、普段のスピンエコーによるT₂強調画像では暗くなる脂肪であっても、高速スピンエコー法では、脂肪は明るく(白く)描出されていまうということです。