ラザフォードの原子模型

Rutherford Model (Japanese)
ラザフォード散乱散乱実験
ハイレベル高校物理 原子導入1−4 ボーアの水素原子模型
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ラザフォードの原子模型またはラザフォード・モデル(英: Rutherford model)は、アーネスト・ラザフォードが提案した原子の内部構造に関する原子模型。

この模型では、原子の大きさに比べて非常に小さな中心核(すなわち原子核)に原子の質量の大部分と電荷が集中しているとしている。

「ガイガー・マースデンのα粒子散乱の実験結果」

入射したα粒子の大多数はそのまま直進するが、約8000回に一度、90°を越えて180°に近くなるような後方散乱が起きる。この散乱の大きさ (確率) はターゲットの金属箔の原子量が大きいほど大きい。

「ラザフォードの有核原子模型」 ラザフォード (イギリス: 1871 – 1937) は,上にまとめられている ガイガーとマースデンの 実験結果と, 前ページで述べた トムソン模型の不成功 とを考慮して, 原子内のプラス電荷 +Ze は 原子全体に広がっているのではなく, かなり狭い範囲に局所的に かたまっていて, そのかたまりとα 粒子の プラス電荷とが クーロン (フランス: 1736 – 1806) の斥力で反発しあって α 粒子の大角度の 散乱が起きるのでは ないかと考えました. そのかたまりを 原子核 といい, このラザフォードの 原子模型をしばしば 有核原子模型 と呼ぶことが あります. 下図 が 有核原子模型 のイメージです.

「ラザフォード散乱」

クーロン相互作用による荷電粒子間の弾性散乱

 ラザフォード は,有核原子模型によって α 粒子散乱の実験結果を うまく説明できるかどうか 研究し, ラザフォード散乱の公式 を導き, その結果が実験データに ぴったりと合うことを 見つけました(1911).
 ラザフォードは, 原子内の全ての プラス電荷 +Ze が中心の1点 (原子核) に集中していると考え, 入射したα 粒子が この点電荷から クーロンの反発力 を 受けてはじき飛ばされて 散乱すると考えると どうなるか 検討しました

このようなクーロン力 による散乱を しばしば ラザフォード散乱 と呼びます. 数式が少し必要ですから, 別のページで 説明します. 少しめんどうですので, わかり難い方は とばしましょう.

上図 のように, 入射したα 粒子の進行方向が ターゲットの原子核から どのくらい 離れているかを 示す距離 b を 衝突パラメーター といいます. b = 0 なら 正面衝突です. b が小さいならば α 粒子の 軌道 は 大きく曲がるでしょう. b が大きく α 粒子が遠くを 通過するときには, 粒子が受ける力は 小さく,軌道はほとんど 曲がらずに ほぼ直進 するでしょう.
 つまり,α 粒子の 入射速度 v が 一定ならば, 軌道は衝突パラメーター の大きさできまって しまいます. このようすを表したのが 下図です. これは (2-5-A) のページで ニュートン力学を 使って計算した結果を 図示したものです.

「ラザフォード散乱の角度分布」
 上図 でわかるように, 入射したα 粒子の進路が ターゲットの原子核に 近い(衝突パラメーター b が小さい) ときには軌道は大きく 屈折し,後ろの方へ散乱されます. しかし b が大きく, α 粒子が遠くを 通過するときには 軌道はあまり大きく 曲がりません.
 実際のα 線の散乱の 実験においては, 左方から入射する α 粒子の数は 場所によらず ほぼ一定です. つまり単位面積あたり, 単位時間あたりに 入射するα 粒子の個数 N は一定であると考えて さしつかえありません. N が入射α 線の 強度 です. これらたくさんの α 粒子のうち, ある角度の方向に どのような割合で 散乱されるか という, 散乱の割合を 角度分布 といいます. 厳密に言えば, ある角度 θ の方向の 単位立体角の中に 単位時間内に散乱される α 粒子の個数を 入射α 線の強度 N で割り算した割合を 散乱の断面積 といい, 角度 θ の関数 σ(θ) と表して 角度分布 と呼びます.
 ラザフォード散乱の 角度分布 (断面積) σ(θ) は, 1911年 ラザフォード により ニュートン力学に基づいて 求められました. それは 次式のように表されます. 詳しい説明は (2-5-A) のページ にありますが, 難しいと思う方は 結果を信用してください.

上式の角度分布が 実験結果と極めてよく 一致することが示され, ラザフォードの 有核原子模型の 正当性 が実証されました.

ラザフォードは, 上に述べた 角度分布 (断面積) の公式を ニュートン力学 に基づいて導きました. ニュートン力学は 古典力学 とも呼ばれ, 原子や原子核のような ミクロの世界 では 必ずしも正しいとは 言えないことが 後でわかりました. ミクロの世界を 正しく記述する理論は 量子力学 であることが 10数年後に 明らかになりました.
 しかしながら, 幸いにして, ラザフォード散乱を 量子力学に基づいて 解析しても, ラザフォードが求めた ものと全く同じ 結果が得られる ことが 後で わかりました. 「ああー良かった!」

「原子核の電荷の大きさ」 上の式で示した ラザフォード散乱の 角度分布 σ(θ) は大成功でした. 角度依存性だけでは ありません. 副産物がありました. σ(θ) は 因子 Z 2 を含んでいるので, 角度依存性 だけでなく, 散乱の大きさ (散乱の確率) を精密に測定すると Z の値が わかります. Z は 原子の中の電子の個数 です. それまでは Z は原子量の 約半分という 少々あいまいな値しか わかっていませんでしたが, ラザフォード散乱によって Z の値が 精密にわかれば, 原子核の精密な電荷が わかり, ひいては原子の中の 電子の個数が 精密にわかるわけです. その結果, Z は原子番号に等しい ことが わかりました.

ラザフォードの原子模型 の成功 によって, 原子はプラス電気を 持った 原子核 と, その回りを とりまいて運動する 電子 とで構成されている ということが 明らかになってきました.
 原子には Z 個の 電子が含まれ, これらは 全部で -Ze の電荷を 持っています. 原子核には, 電子の マイナス電気を 打ち消す +Ze の電荷が 集中 していると 考えられます.
 これまでの ページで詳しく 説明したように, 原子全体の質量に比べて, 電子の質量は桁違いに 小さいことがわかっています. したがって, 原子核が原子全体の質量 のほとんど全てを 担っていると 考えられます.
 それでは, 原子核は 何から, どのように, 構成されている のでしょうか.

  「原子核の大きさ」
 ラザフォード散乱の角度分布 の公式は, 原子核の +Ze の電荷が1点に集中した 点電荷 であるという 仮定のもとに導かれました. しかし, 電荷の分布が多少 広がっていても, (2-5-A) のページ で説明した 最小の 最近接距離 以下であれば, ラザフォードの公式は 成り立つはずです. したがって, 実験データが ラザフォードの公式 によく合致していれば, そのときの原子核の 大きさ (半径) は 最小の最近接距離 よりも小さいと 判断されます.
 もう一度 ラザフォード散乱の 軌道を眺めてみましょう (下図左). 赤の矢印 で 示した距離が 最小の最近接距離 です.

薄い銅箔に ラジウムからの α 線を 当てたときの散乱の 実験においては, 散乱角 θ が 180°近くまで ラザフォードの公式が 実験結果に よく合っていました. このときの α 粒子のエネルギーは E = 5.3 MeV です. 銅は Z = 29 です. α 粒子が原子核に 正面衝突する場合に 原子核に最も 近づきます. そのときの 最近接距離は

となります. この結果, 銅の原子核の 大きさは 1.6 x 10-14 m より小さい と考えられます. 原子の大きさが 10-10 m であることと比べると, 原子核の大きさは 約1/5000以下 です. 原子核が いかに小さいかが わかります.

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