プロトン
本記事では水素原子核を指す(陽子ではない)。
プロトンには電荷の偏りがあり、正の電荷を持つ。
プロトンは自転(スピン)しているので、回転軸方向に磁場(磁界)と磁力(磁気双極子モーメント)を生んでいる。
また、右方向に回転しているプロトンと左方向に回転しているプロトンがあり、磁場と磁力の向きは逆になる(スピン量子数S)。
以後、プロトンのスピンは描かず、プロトンの回転軸と磁力の向きを棒矢印で表す。
右回転のプロトン方が左回転のプロトンよりエネルギーレベルが低い。
そのため、たくさんのプロトンを並べていくと右回転のプロトンの方が若干多い。
上向きの方が安定した状態なので、下向きよりも上向きのスピンの方が数が多くなります。
下向きのスピンも存在すると弱くなりそうですよね。実際、1.5テスラの場合、10万個に一個の割合でしか上向きのスピンの数が下向きのスピンの数より多くなりません。
しかしながら、プロトンの数がめちゃくちゃ多い!
1㎤あたり10×10²³乗個のプロトンがあるので、上向きと下向きで打ち消しあっても、1㎤当たり18乗個の上向きのプロトンが存在します。(1.5テスラで10の18乗個のプロトン!1000兆の100倍!10京個のプロトンがある…しかも1㎤当たりの話!)
プロトンの磁力(磁気双極子モーメント)はベクトル量(向きを含む量)で考える(磁化ベクトル)ことができる。
同じ向きの磁力は強め合い、逆向きの磁力は打ち消し合う。
多くのプロトンのかたまりを見てみる。
外部磁場がない通常の場合、磁力はバラバラな方向を向いており、力を互いに打ち消し合って全体的な磁力は発生しない。
ここに外部から磁場をかけると、プロトンが持つ磁場によって平行に並ぶ。
今回は外部磁場の方向を下から上として考える。
外部磁場の中では右回転のプロトンの方が左回転のプロトンより若干多いので、磁力が上向きのプロトンの方が若干多くなる。
多くのプロトンを含む物質は、外部磁場の中ではプロトンの持つ磁力(磁気双極子モーメント)の総和(磁気モーメント・巨視的(見かけの)磁化ベクトル)が若干上向きになる。
磁気モーメント
人体の60%は水分で、脂肪は15%と言われている。そしてこれらにプロトンが多く含まれている。
人体の組織には多数のプロトンがある。
MRIの内部はコイルの電磁誘導で外部磁場がかかっている。
ここに人間が入ると、人体の中にあるすべてのプロトンの磁力が、外部磁場に沿って平行に並び、巨視的磁化ベクトルは外部磁場の方向を向く。
歳差運動
外部磁場に対して平行な磁化ベクトルのプロトンを細かく見ると、外部磁場の方向を軸に、ぐらぐらとコマのような首ふり運動(歳差運動)をしている。
ω0=γB0
γ:磁気回転比
B0:外部磁場の強度
この歳差運動は、真横に倒れたプロトンがもとに戻るときに顕著に現れる。