FWHMとファノ因子

FWHM(半値幅)

ピークの高さの半分の値でのスペクトルの幅(拡がり)のこと。

放射線の性質を知るためには、放射線検出器を用いてそのエネルギー分布(放射線の持つエネルギーとその頻度の関係)を測定することが必要となる。この場合、単一エネルギーを持つ放射線を測定したとしても、検出器を通して得られるエネルギー分布は一般に広がりを持ったピークとなる。このピークの高さの2分の1の高さにおけるピークの広がり幅を半値幅、またはFWHM(Full Width at Half−Maximum)という。半値幅で表されるエネルギー幅をそのピークのエネルギーで除した値はエネルギー分解能と呼ばれ、放射線検出器のエネルギー測定性能の目安として用いられる。

ファノ因子

確率分布のばらつきの指標

$$ F=\frac{\sigma_W^2}{\mu_W} $$

ファノ因子は一種のSN比とみなすことができる。ある時間窓の間に事象が起こる回数が確率的に決まるような場合に、ファノ因子は確率変数の見積もりに対する信頼性の指標となる。

時間窓を無限に長く選んだ場合、ファノ因子は変動係数と等しくなる。

検出器におけるファノ因子は衝突によるエネルギー損失によって決まるが、この過程は大元の統計に完全に従うわけではない。ある原子がイオン化される方法の数は電子殻の占有状態によって制限されるため、電荷を発生させる過程のそれぞれは、互いに独立に起こることができないのである。その結果、最終的に得られるエネルギー分解能は、元の統計から予想されるよりも高くなる。

放射線検出器のエネルギー分解能は,放射線が検出器に付与したエネルギーによって生成された電子・イオン対,電子・正孔対,準粒子などの励起子の統計精度に依存します.さらに正確には,エネルギー分解能は生成された励起子数の1/2乗に反比例します.これを統計精度といいます.このため,同じエネルギーが付与された場合には,励起子を生成するエネルギーが小さな材料の方がエネルギー分解能が良くなります.超伝導体検出器が半導体検出器より良い分解能を持つのは,このためです.

 ところが,実際の放射線検出器のエネルギー分解能は,統計精度よりも良い値を示します.統計精度と実際のエネルギー分解能との比をファノ因子と呼び,ファノ因子は1より小さい値を持ちます.

 放射線によって付与されたエネルギーで励起子が生成される場合,おのおのの励起子が独立に生成されるのであればファノ因子は1で,エネルギー分解能は統計精度と同じになります.一般に,ファノ因子は励起子生成が互いに独立ではないため,と理解されていますが,正確にはその原因は分かっていません.

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