加速器の原理
加速器は荷電粒子(イオンや電子)を電場で加速する装置です。
※イオンとは、電子を失って正電荷に帯電した原子核のことです。
水素原子は、原子核に正電荷(プラス)の陽子があり、まわりを負電荷(マイナス)の電子がまわっています。
この二つを引き剥がし、外から正の電圧をかけると、負電荷の電子が電極に引き寄せられ加速されます。また、負の電圧をかけると、正電荷の陽子イオンが引き寄せられ加速されます。
一つの電子が1Vの電圧で加速されるときのエネルギーは1eV(電子ボルト)です。
また、エネルギーは次のように変換できます。
\begin{align}
E &= 1[eV] \\
&= 1.6×10^{−19}[J] \\
\end{align}
ここで水素原子ではなく、炭素・カルシウム・金といった原子のイオンを加速すると重イオン加速器となります。



線形加速器(軌道が直線形)
線形加速器は電場で加速します(磁場についは荷電粒子の軌道に関係するので線形加速器とは関係ない)。
荷電粒子が直進する直線型加速器には、電場が時間的に一定な静電加速器と、周期的に変化する高周波加速器があります。
現在、10MV ぐらいまでのイオン加速器は静電加速器が用いられていますが、それより高いエネルギーのイオン加速器と数MeV 以上の電子加速器はほとんど高周波加速器が用いられます。
静電場による加速
コック・クロフトワルトン加速器

交流を整流する回路で作った直流電圧によって高電圧を電極に与え、水素イオン(陽子)を加速します。
コンデンサーと整流器を何段か重ねることで1MV程度までの電圧を得ることができる。
ファン・デ・グラーフ加速器(シングルエンド型)

ローラーによってゴムベルト(絶縁ベルト)を回転させて電荷を運び、絶縁性の柱の上に置かれた中空の金属球に溜めていくことで非常に高い電位差を作り出し、高圧の直流電圧を発生させることができます。
バンデグラフ加速器は電圧が1MV以上で20MVを超える機種もあります。
タンデム型ファン・デ・グラーフ加速器

タンデムとは、馬が縦に2頭並んで引く馬車という意味で、イオンが加速管の中間にある高電圧ターミナルに向かう際と遠ざかる際の2回にわたり、直列に加速される事に由来します。
この加速器は、正の高電圧に帯電した電極を中心として、その両側に加速管が2本直列につながった構成になっています。ターミナルの直流高電圧はバンデグラーフ発電機を使用します。電荷を運ぶのに金属を絶縁物でつないだペレットチェーンにより静電誘導の現象を応用し高電圧に帯電させます。
まず、負イオン源で原子に電子を結合させ負イオンを生成します。
負イオンは正の高電圧ターミナルに引き寄せられ加速されます。
高電圧ターミナルに到達した負イオンは電子ストリッパー(炭素薄膜または窒素ガス層)で多数の電子がはぎ取られ正のイオンに変わります。
すると、この正イオンはターミナルに反発されて、2回目の加速を受けることになります。
高周波電場による加速
直線加速器(線形加速器)

粒子が加速されると速度だけでなく質量が増加(相対論的効果)する。
低エネルギーでは主に速度が増加し、エネルギーが高くなるにつれて質量変化が大きくなる。
電子の場合、エネルギーが1MeV を超すと速度は光速とほぼ同じになり、それより上では質量が増加する。一方、陽子はエネルギーが1GeV 近くになるまでは速度と質量がともに変化する。
このため、イオンと電子とでは線型加速器の構造が異なってくる。
イオン線形加速器では周波数を低く、直線状に並べている中空円筒電極(ドリフトチューブ)の長さをイオンの速度に比例して長くしている。
その上で隣り合うドリフトチューブを高周波の両極に接続したウィドレー型と、ドリフトチューブ付の空洞共振器に定在波を生じさせたアルバレ型がある。
前者は荷電粒子の速度が遅い場合に使われるが、陽子などを高エネルギーまで加速するには後者が用いられている。
一方、電子線形加速器には穴の開いた円板を等間隔につけた進行波加速管が用いられていることが多く、基本的に高エネルギーまで同じ構造の加速管が用いられる。
このほか時間的に変化する磁界を用いて加速する誘導型線型加速器や、断面が4 重極電界になるような進行方向に長い四つの電極を持つRFQ 型線型加速器がある。
後者の場合、電極先端部にイオンの速度に同期した波形をつけて加速電界を形成している。
円形加速器(軌道が円形)
円形加速器は、磁場の中を進む荷電粒子が受けるローレンツ力を向心力として、円形の軌道を描かせながら加速する装置です。
直流磁場(静磁場)
サイクロトロン


荷電粒子がD電極間の高周波電場によって加速され、磁場中をサイクル(循環)して加速されます。粒子が半周回って再びすき間に達したとき、高周波電場の位相は180度逆転しており、粒子は再び加速されます。
加速された粒子のエネルギーは増大し、それに伴って軌道半径が大きくなり(磁場が一定のため)、軌道はらせん状となります。回転周期が同じ(等時性がある)なので、加速電圧の周波数を変化させる必要がありません。
マイクロトロン

一様な磁場で電子を周回させ、加速空洞を通過するごとに電場で加速する装置です。
加速された粒子のエネルギーは増大し、それに伴って軌道半径が大きくなり(磁場が一定のため)、軌道はらせん状となります。
磁場変調(交流磁場)
ベータトロン

電子(β粒子)専用の加速器。
上下にある電磁石の両極の間にドーナツ形の真空容器をおき、この中に電子を走らせます。
磁場の強さを増すと誘導電場が生じ、それによって電子を加速します。
また、電子を一定の半径に保つための磁場があり、これら二つの磁場を一定の関係(ベータトロン条件)に保ちつつ増加させます。



シンクロトロン

荷電粒子の加速に合わせて磁場と加速電場の周波数をコントロールする事によって、加速粒子がシンクロ(同期)し、軌道半径を一定に保ちながら加速されます。
荷電粒子が電場の向きに沿って移動すると、周期的に変化する電場によって力がかかり加速されます。
高周波電場が荷電粒子を加速するためには、高周波電場の周波数が荷電粒子の回転周波数よりも高くなければなりません。荷電粒子の回転周波数が高周波電場の周波数と同じ場合、荷電粒子は高周波電場に同期し、加速されます。この状態を共鳴と呼びます。共鳴条件を満たすために、高周波電場の周波数は荷電粒子の回転周波数に対して調整されます。最終的に加速された荷電粒子は、この周期に同期したパルス状になります。
また、変化する磁場を用いて、加速の全期間にわたって軌道を一定に保ちます。軌道半径を大きくし磁場を強くすればエネルギーを大きくすることができます。
円形軌道を作る磁石はサイクロトロンと異なり、電子シンクロトロンでは高周波電場の周波数は一定ですが、イオンの場合は周回周期がエネルギーとともに短くなるので、磁場と電場の周波数を高くしなければならない。
円軌道→磁場を使う
・らせん状の軌道→静磁場(シンクロトロン・マイクロトロン)
・半径一定の軌道→高周波磁場(ベータトロン・サイクロトロン)
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